離婚時に取り決めた養育費が支払われずに滞納されている場合、子どもの成長や日常生活に深刻な影響が及びます。
このような場合には、相手の財産を差し押さえて、強制的に養育費を回収するための「強制執行」という手続きが有効です。
本記事では、養育費の強制執行の基本的な流れや注意点について解説します。
養育費の強制執行の流れ
養育費の強制執行の流れは以下の通りです。
1. 債務名義の取得
強制執行を行うためには、「債務名義」という公的な証明書が必要です。
債務名義とは、養育費の支払義務の存在と内容を証明する書面のことで、以下のようなものが該当します。
- 調停調書・審判書
- 判決書
- 強制執行認諾文言付公正証書
当事者間で作成した離婚協議書は債務名義にあたりません。
そのため、離婚時に債務名義を取得していない場合は、養育費請求調停を申し立て、債務名義を取得するところから始める必要があります。
2. 差し押さえる財産の特定
次に、給与や預貯金など、差し押さえの対象となる財産を特定します。
強制執行を申し立てるには、給与であれば相手の勤務先を、預金であれば金融機関名と支店名まで特定する必要があります。
3. 裁判所に申し立てる
債務名義が準備と財産の特定ができたら、申立書や債務名義の正本などの必要書類を揃え、相手の住所地を管轄する地方裁判所へ「債権差押命令申立」を行います。
4. 差押命令の発令と養育費の回収
申立てに不備がなければ、裁判所から「債権差押命令」が発令され、内容が勤務先や銀行に送達されます。
給与差押えの場合は勤務先から養育費分が直接振り込まれ、預金差押えの場合は口座残高から滞納分を回収することができます。
養育費の強制執行で注意すべき点
養育費の強制執行で注意すべき点は以下の2つです。
相手に財産がなければ回収できない
強制執行はあくまで相手の財産を差し押さえて行う手続きです。
そのため、相手が失業中であったり、預金口座に残高がなかったりした場合は、回収できないこともあります。
養育費の請求権には時効がある
養育費の請求権には、毎月の支払期日ごとに個別に進行する「消滅時効」があり、相手に援用されると時効期間にあたる滞納分を支払ってもらえなくなるため、早めに行動することが大切です。
時効期間は、取り決めの方法によって異なり、当事者間の合意で決めた場合は5年、調停や公正証書などの債務名義がある場合は10年と定められています。
まとめ
養育費の強制執行は、滞納されている養育費を回収するのに有効な手段ですが、「債務名義の取得」や「相手の財産特定」といった専門性の高い手続きが必要です。
時効によって権利を失うリスクもあるため、弁護士へ相談することも検討してみてください。








