「親権争いは母親が有利」といったイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、親権は法律で母親に優先権が認められているわけではありません。
あくまで「子どもの福祉」を最優先に考えるため、母親側に監護者として不適切な事情があれば、父親が親権者となることも十分にあり得ます。
本記事では、離婚調停での親権争いにおいて、母親が不利になるケースを紹介します。
育児放棄や虐待が認められる場合
母親が育児放棄(ネグレクト)をしている場合や、子どもに対する身体的・精神的な虐待が認められる場合は、親権を持つ資格がないと判断されます。
たとえ離婚前の主たる監護者が母親であったとしても、育児放棄や虐待が認められれば、父親が親権者として指定される可能性が高くなります。
母親の健康状態に著しい問題がある場合
母親に重度の精神疾患があったり、アルコールや薬物への依存があったりすると、子どもの監護が困難であると裁判所に判断されやすくなります。
とはいえ、病気や障害があること自体が、即座に親権者として不適格と判断されるわけではありません。
その健康状態が子どもの成育にどのような影響を与えるかが重視されます。
治療を受けつつ、周囲のサポートを得るなどして、問題なく育児ができていることを立証できれば不利な状況を覆せる可能性があります。
別居中の子どもを同意なく連れ出した場合
離婚前の別居時に母親が子どもを連れて家を出ることは、親権争いで直ちに不利になるわけではありません。
むしろ、安定した監護を継続できていれば、親権争いで有利に働くことさえあります。
ただし、すでに別居して父親が子どもを監護している状況で、母親が同意なく子どもを連れ去った場合は話が全く別です。
この行為は「未成年者略取・誘拐罪」という違法行為とみなされる可能性があり、親権争いで不利な立場に置かれることになります。
子ども自身が父親との生活を強く望んでいる
家庭裁判所は、子どもの年齢がおおむね10歳前後以上に達している場合、子どもと面談するなどして意向を確認します。
子どもがしっかりとした判断能力に基づき、「お父さんと暮らしたい」と強く希望している場合、母親側に問題がなくても、父親が親権者として認められる可能性があります。
なお、子どもが15歳以上に達している場合は、ほとんどのケースで子どもの意向が反映されます。
まとめ
母親が親権争いで不利になるケースには、育児放棄や虐待が認められる場合、健康状態に著しい問題がある場合、父親の同意なく子どもを連れ出した場合、子ども自身が父親との生活を強く望んでいる場合があります。
裁判所は「子どもにとって利益となるか」を基準に判断するため、父親が親権者に選ばれる可能性は十分にあるのです。
親権争いで不安を感じている場合は、弁護士に相談することも検討してみてください。





