配偶者の収入に依存して生計を立てている場合、離婚をすると経済面において心配という方は多いです。
もっとも、離婚時に元配偶者が厚生年金に加入していた場合は、年金分割制度の恩恵を受けられることがあります。
本稿では、離婚時の年金分割とは何かについて、手続き方法や必要書類も併せて解説していきます。
離婚時の年金分割について
離婚時の年金分割とは、婚姻生活を続けている間に夫婦で納めた年金について、その保険料を分割することを指します。
対象となるのは、厚生年金および共済年金の部分です。
もっとも、受給予定の年金の額をそのまま分けるのではなく、納付のあった年金の保険料を分割し、将来の年金を計算することになります。
婚姻していた期間が長くなればなるほど納めた年金も多くなるため、婚姻生活が長期にわたった場合の離婚では、年金分割によって多くの金銭を得ることができる可能性が高まります。
また、年金分割があった場合には、既に自己が年金を受給しているときには請求の翌月から、未だ受給が開始していないときには自己が年金の受給要件にあてはまるようになってから分割された年金を受給できることになります。
この制度は、離婚後に専業主婦・主夫などが経済的に困窮してしまうのを防ぎ、生活の保障を行うために定められたものとされています。
年金分割の種類
年金分割には2つの種類が存在します。
以下、それぞれについて見ていきましょう。
合意分割
元夫婦同士で話し合いを行い、分割割合についての合意を形成して分割を行う方法のことを合意分割といいます。
この場合、割合を自由に決めることができるのが利点ですが、上限は5割となります。
合意分割は、夫婦のどちらか一方、もしくは両方が第2号被保険者(職場において厚生年金に加入している者)である場合に行うことができます。
3号分割
婚姻していた間に、国民年金において第3号被保険者となっていた期間がある者が年金分割を求める方法のことを3号分割といいます。
第3号被保険者とは、厚生年金保険の被保険者であり、20~59歳の者を指します。
主には家事のみに従事していた者や、元配偶者の扶養の範囲で労働をしていた者がこれにあたります。
合意分割の場合とは異なり、割合は5割で固定となっています。
また、相手方との合意形成を要しないのもこの方法の特徴です。
もっとも、平成20年4月1日以降であり、第3号被保険者となっていた期間のものしか分割ができないことに注意が必要です。
なお、以上で紹介してきた分割方法は、両方請求することができます。
年金分割の手続き方法
年金分割の手続きは、合意分割の場合と3号分割の場合で異なります。
合意分割の場合
合意分割の場合には、まず「年金分割のための情報通知書」と呼ばれる書類を取得しなければなりません。
これは、日本年金機構において取得することができ、窓口まで出向く方法でも、郵送でも請求が可能です。
その後、夫婦間での話し合いによって按分割合を決定し、その内容を盛り込んだ合意書を作ることになります。
合意書が完成したら年金事務所に対して申請を行います。
申請前に離婚届を提出し、離婚を成立させておく必要があることにも注意が必要です。
申請の際には「標準報酬改定請求書」と呼ばれる書類を提出し、手続きは完了となります。
3号分割の場合
3号分割の場合には相手方との合意形成を要しないため、書類の提出だけで手続きが完了します。
具体的には合意分割の場合と同様に情報通知書を取得し、後に解説する必要書類を取得した後、標準報酬改定請求書を含む書類一式を提出すれば手続きは完了です。
年金分割の必要書類
年金分割のための情報通知書は、先述の通りどちらの分割方法でも必要となります。
通知書を取得するためには年金事務所に年金分割のための情報提供請求書、戸籍謄本、基礎年金番号が記載された書類を提出する必要があるため、実質的にはそれらも必要となります。
加えて、先述の標準報酬改定請求書やマイナンバーカード(または年金手帳等)、戸籍謄本や請求を行う人の本人確認ができる書類なども必要となります。
なお、合意分割の場合には、追加でいくつかの書類が必要となります。
まずは、戸籍謄本について、1ヶ月以内に入手したことが必要となります。
もっとも、これはマイナンバーの記載が請求書にある場合には不要です。
また、年金分割についての合意内容を証明するため、離婚協議書や公正証書などの書類が必要となります。
離婚問題についてはMYパートナーズ法律事務所にご相談ください
年金分割の手続きには様々な書類が必要となりますので、少しでも手続きに不安を感じたり、話し合いが難しかったりする場合には、法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。
MYパートナーズ法律事務所では、離婚問題に関するご相談を承っております。
お悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。